自然資源は、人間が独占していいものなのか?

今年も3.11を迎えます

今年も3月11日が巡ってきます。

先日放送したNHKスペシャル「被曝の森」をご覧になりましたか?


私たちはたくさんの問題を、見て見ぬ振りして日常を過ごしているんだな・・・

『東日本大震災の記憶の風化』という衝撃的な言葉も、ちらほら聞かれるようになりました。

さて、このコラムではちょっと違ったところを語りたいと思います。

地下水の汚染を防ぐ大地

番組は、いくつかのテーマから「被曝の森」を取り上げています。

その中で「地下水の汚染を土が防ぐ」という部分がありました。

降り注いだ放射性物質が、雨によって地面に染み込みます。

地下水の汚染から、河川、そして海へ汚染が広がっているかどうかの調査でわかったこと。

土の中の粘土が、放射性物質を強力に吸着してとどめておいてくれていることがわかりました。

それゆえ、地下水は汚染されていなかったのです。

粘土の粒は、たくさんの孔(あな)が空いています。

この孔に放射性物質を取り込んで、離さないでいてくれるのです。

大地の力、すごいですね。

近頃日本でも話題の「クレイセラピー」をご存知ですか?

クレイはこの粘土のことなのですが、その吸着性を利用して治療や美容に利用するのがクレイセラピーです。

フランスなどで採掘された粘土を乾燥し、パウダークレイとして製品化され私も愛用しています。

実はお友だちが日本でクレイを普及させる活動をしているので、この部分に興味を引かれたのですね。

そして番組をみながら、ふとこんなことを考えました。

粘土を掘り尽くしてしまったらどうなるんだろう?と考えた

福島の森の地下で、放射性物質を食い止めてくれる粘土。

フランスの大地でも、人間が利用する以外の何か役割があるのかもしれません。

もし今よりずっとずっとクレイの需要が増えて、人間が粘土層を掘り尽くしてしまったら?

何か支障が出るのではないかと考えられるのかもしれない。

そんなことをぼんやり考えました。

アーユルヴェーダ薬草も同じ

粘土(クレイ)は、枯渇が心配される石油とは違って、そこまで使われてはいないでしょう。

ところが、アーユルヴェーダの薬草オイルで使用されている薬草が絶滅している事実があるのです。

何千年も前からのレシピで作られているもっとも有名なオイルに、マハナラヤナというオイルがあります。

本来52種類の薬草から作られるオイルですが、現在は10種類ほどの薬草が絶滅してしまったため36〜42種類の薬草を使って作っています。

アーユルヴェーダオイルを作るために使い尽くして絶滅した訳ではないのでしょうが、でも一つの要因として「人間が使った」ことはあるでしょう。

自然の資源は有限です。

私たちは動物の絶滅には関心を寄せやすいですが、植物や土がなくなることにはあまり関心を持ちません。

私たちと同じ自然の中のもの、なのに。

自然のめぐみを分けてもらう

アーユルヴェーダは、自然のめぐみあってこそのもの。

薬草オイルを製造しているスリランカでは、現在開発が進んで薬草の森がどんどんなくなってきています。

私たち人間は、地球を自由にしていい存在ではありません。

地球、自然の片隅を借りて生きているものなのです。

自然を使い尽くすことなど、していい訳ではありません。

アーユルヴェーダの自然観は、全てのバランスが整ってこそ健やかだということ。

人間だけがトクをするのは、自然のバランスを損なっていることに他なりません。

自然のバランスこそが、全ての基本

知恵を持ち、地球に我が世の春を謳歌している私たち人間だからこそ、考えなければなりません。

そもそも「原子の火」は自然の理に適っているのだろうか・・・・

人間が楽をするために、ここまで「火」を使っていいのだろうか。

人間だけが持つことを許されているのが「知力の火」。

アーユルヴェーダではピッタと呼び、物事を噛み砕いて理解する力のこと。

「知力の火」を使って、自然の中の私たちでいることを考えなければならないのです。