インドとスリランカ、アーユルヴェーダの歴史

インド系とスリランカ系のアーユルヴェーダの違いを教えてください

アーユルヴェーダに関心を持っているヨガの生徒さんからご質問を受けました。

私自身アーユルヴェーダはインドのものだと、思っていました。

ところが、書店で『スリランカ・アーユルヴェーダに癒される』のような本を見つけ

『ん??』と思ったのが、数年前。

インド系の先生にアーユルヴェーダを学んだ私が、今、スリランカの医師によるアーユルヴェーダを学んでいます。

インドとスリランカのアーユルヴェーダって、何が違うのでしょうか?

まずは両国のアーユルヴェーダの歴史から見て見ましょう。

インドが発祥の地です

アーユルヴェーダは紀元前5、6世紀ごろに成立したインドの伝統医療です。

他の伝統医療と同じく、呪術も含んだ形で発展して来ました。

インドで起こったアーユルヴェーダは、仏教とともに紀元前3世紀ごろスリランカへ伝わりました。

インドではアーユルヴェーダは衰退した

インド発祥のアーユルヴェーダですが、12、3世紀ごろイスラム世界からアラビア医学=ユナーニー医学がインドに入って来ました。

アーユルヴェーダとユナーニー医学は、共存・互いの良いところを取り入れあったようです。

しかし、イスラム教徒の支配する地域では、ユナーニー医学が中心となりました。

インドで大繁栄をした、イスラム教の国ムガール帝国の隆盛とともに、インドの中心医学はユナーニー医学へと移り変わります。

アーユルヴェーダは、ヒンドゥー教徒の住む地域と、貧しい人々の間で細々生きながらえて来ました。

その後、16世紀に西洋諸国のインド進出が始まると、西洋人たちはユナーニーもアーユルヴェーダも、恐ろしく未開的な、迷信的な、遅れている呪いのような医療と見ました。

アーユルヴェーダはどんどん衰退してゆきます。

土着の医療と結びついたスリランカのアーユルヴェーダ

一方、スリランカに入ったアーユルヴェーダは、現在に至るまでスリランカ全土で行われている医療です。

もともとスリランカで行われていた『ヘラウエダカマ』と言う伝統医療と結びつき、スリランカ国内に広まり定着しました。

現代においては、スリランカのにおけるアーユルヴェーダは、インドに比べて国民に広く用いられていると考えられるでしょう。

アーユルヴェーダの『発見』

インドで衰退したアーユルヴェーダ。

ところが18世紀に、イギリスの言語学者サー・ウィリアム・ジョーンズが西洋にサンスクリット語を紹介したことによって、アーユルヴェーダは西洋で注目されることになりました。

ここから、インド・スリランカ両国内で、伝統を堅く守る『復古的アーユルヴェーダ派』、西洋医学の良いところを取り入れる『折衷的アーユルヴェーダ派』の争いが生じます。

スリランカ国内では、この争いによって1959年、伝統医学委員会の委員であった自治大臣が暗殺される事件も起こりました。

アーユルヴェーダの再系統化

20世紀に入るとインド・スリランカ両国で、西洋医学と同じようにアーユルヴェーダを体系的に学ぶ大学がいくつも設立されました。

アーユルヴェーダ医師免許の制度も確立され、伝統医師として開業することができます。

蛇足ですが、アーユルヴェーダ医師についてお話ししますね。

インドやスリランカのアーユルヴェーダ医師免許を取っても、日本の医師免許がないと日本では『医師』として医療活動は行えません。

もしみなさんがアーユルヴェーダ医師の診察にかかるときは、日本の医師国家資格を持っているかどうかを確認すると安心です。